音楽制作(DTM)を始めるにあたり、「MDR-CD900ST」というヘッドホンの名前を耳にしたことはありませんか?プロの現場でも定番として使われる一方で、「音質が悪い」という噂や、「音楽鑑賞には向かない」という声もあり、初心者はどれを選べばいいか迷ってしまいますよね。なぜ「音質が悪い」と言われるのか、その噂の真相から、正しい使い方まで、DTM初心者でもわかるように丁寧に解説します。

この記事では、DTMを始めたいあなたのために、MDR-CD900STの本当の評価を徹底解説します!
【結論】DTM初心者におすすめ?MDR-CD900STの総合評価
DTM(Desk Top Music)を始めるにあたり、ヘッドホン選びは非常に重要です。なぜなら、音源の良し悪しを判断する「耳」となるからです。DTM用ヘッドホンは、「できるだけ原音に忠実」で、音の細部やノイズ、各パートのバランスが正確にわかることが最も重要視されます。
結論から言うと、MDR-CD900STはDTM初心者にとって非常におすすめできるヘッドホンです。
MDR-CD900STがDTM初心者におすすめできる理由
- 業界標準の音質: 発売から30年以上経つ今も、多くのプロのレコーディングスタジオで使われ続けている「業界標準」のヘッドホンです。制作現場で基準となる音を知ることは、初心者がスキルアップする上で非常に大きなメリットとなります。
- フラットな音質: 各楽器の音が分離しやすく、ミックスにおける各帯域のバランス確認がしやすい“フラット”な音質を持っています。これが、後述する「音質が悪い」という誤解の核心でもあります。
- 高い耐久性とメンテナンス性: 故障した際もパーツ交換が容易で、長く使い続けることができます。修理を依頼しなくても、自分でパーツを取り寄せて交換できる手軽さも、初心者には嬉しいポイントです。
しかし、注意点もあります。MDR-CD900STは“楽しく音楽を聴く”用途には不向きです。この点については、次の項目で詳しく解説します。
MDR-CD900STは本当に「音質が悪い」のか?噂の真相

MDR-CD900STを初めて聴いた人が、「あれ?思ったより音が悪いな」と感じることがあります。この「音質が悪い」という評判は、音楽鑑賞用ヘッドホンと比較した際に生じる、大きな誤解です。
「音質が悪い」と言われる具体的な理由
- 音楽鑑賞用ヘッドホンとの違い: 一般的なリスニング用ヘッドホンは、音楽をより魅力的に聴かせるために、低音や高音を強調する“ドンシャリ”と呼ばれるチューニングが施されています。MDR-CD900STは、そのような味付けを一切排除し、音源を“ありのまま”に再生する“フラット”な音質に設計されています。
- 「楽しく聴かせる」工夫がない: DTM用ヘッドホンは、音楽を「楽しく聴く」ためのものではなく、「正確に分析する」ためのツールです。そのため、迫力や没入感を高めるようなチューニングはされていません。このため、音楽鑑賞用ヘッドホンに慣れている人が聴くと、音が平坦に聞こえ、物足りなさを感じることがあります。
DTMにおける「音質の良さ」の定義
DTMにおける「音質の良さ」は、音楽鑑賞とは全く異なる定義になります。
MDR-CD900ST | 一般的なリスニングヘッドホン | |
音質の評価基準 | 正確性、分離感、忠実性 | 迫力、没入感、楽しさ |
得意なこと | 各パートの音の分離、ノイズ検出、定位の把握 | 音楽鑑賞、ライブ感の再現、豊かな音色 |
苦手なこと | 広がりや空間表現、臨場感 | 正確なミックス、ノイズ検出、粗探し |
MDR-CD900STは、ミックスやマスタリングの際に、音像の輪郭や各楽器の距離感を正確に把握する能力に非常に優れています。逆に、音の広がりや奥行きといった空間表現は掴みづらく、音が近くに感じるという特性も持っています。しかし、これこそがミックス作業において音源の粗を正確に掴むために必要な要素なのです。
MDR-CD900STの音質は「フラット」が特徴|そのメリット・デメリット
今日はノイズチェックでSONYのMDR-CD900STを使って作業してました。最近みんなに悪口ばっかり言われて可愛そうな900STですが、ノイズチェックの用途には必要十分にしてバッチリ。わかりやすかったです。 pic.twitter.com/EBvp6g7NsP
— 木村玲(Ryo Kimura) (@r_kimura) March 28, 2025
MDR-CD900ST最大の特徴である「フラットな音」について、さらに詳しく解説します。
「フラットな音」とは?
「フラットな音」とは、原音に忠実で、特定の帯域(低音・中音・高音)だけを強調しない音のことを指します。これにより、制作者は音源が持つ本来のバランスを正確に把握することができます。
DTMでフラットな音が必要な理由
- 正確なバランス調整: 低音や高音が強調されたヘッドホンでミックスを行うと、その強調された帯域を無意識に削ってしまい、結果的に他の環境で聴いたときに不自然な音になってしまうことがあります。フラットなヘッドホンを使えば、どの環境で聴いてもバランスの取れた音を作りやすくなります。
- ノイズ検出やEQ調整: 音の細部がクリアに聞こえるため、録音時のノイズや不要な音を検出しやすくなります。また、イコライザー(EQ)を使って特定の周波数を調整する際にも、正確な判断ができます。
音楽鑑賞で物足りなさを感じるデメリット
- 迫力や没入感の欠如: 音楽鑑賞の醍醐味である迫力やライブ感が感じにくく、物足りなさを感じることがあります。
- 奥行き・空間表現がわかりにくい: ヘッドホンの特性上、音源の奥行きや空間的な広がりを正確に把握することは難しいです。この点は、ミックスの最終チェックなどでスピーカーを使うことで補う必要があります。
DTM初心者がMDR-CD900STを使う上での注意点
MDR-CD900STを最大限に活用するために、DTM初心者が知っておくべき注意点をいくつかご紹介します。
装着感や密閉型の特徴
- 装着感: 側圧はやや強めですが、軽量なため、慣れれば長時間でも疲れにくいと感じる人が多いです。しかし、人によっては耳への負担や蒸れ感が出やすいため、1時間ごとに休憩を取るなど、適度な休憩を心がけましょう。
- ケーブル: 太くて長いストレートケーブルは、耐久性が高い反面、取り回しには注意が必要です。作業中にケーブルを引っ掛けてしまうことがないように、配線を工夫しましょう。
- 密閉型ヘッドホン: 音漏れが非常に少ないため、レコーディング時にマイクに音が入り込む心配がありません。一方で、外部の音もほぼ聞こえなくなるため、長時間の使用は疲労につながりやすいです。
MDR-CD900STとDTMにおすすめの他社ヘッドホンを比較
MDR-CD900ST以外にも、DTM初心者におすすめのヘッドホンはたくさんあります。それぞれの特徴を比較して、自分に合った1台を見つけましょう。
モデル名 | タイプ | 特徴(DTM初心者向け) | 参考価格帯 |
SONY MDR-CD900ST | 密閉型 | 業界標準・原音忠実・パーツ入手性抜群 | 15,000円前後 |
audio-technica ATH-M50x | 密閉型 | ややリスニング寄り・低域が豊かで迫力がある | 15,000~20,000円 |
AKG K240 Studio | セミオープン型 | 疲れにくい・空間表現も得意でミックス向き | 10,000円前後 |
beyerdynamic DT770 Pro | 密閉型 | しっかりした低音・高解像度・装着感が良い | 20,000円台 |
Sennheiser HD25 | 密閉型 | モバイル性が高い・解像感に優れDJにも人気 | 20,000円台 |
これらのヘッドホンは、それぞれ異なる特性を持っています。用途(録音・ミックス・リスニング)や装着感を優先し、可能であれば実際に店頭で複数試聴して選ぶのがベストです。 自分の耳と制作環境に合ったものを見極めることが、後悔しない選び方です。
まとめ|MDR-CD900STはDTMの「相棒」になれる!
MDR-CD900STに対する「音質が悪い」という評価は、DTM用の“忠実な基準”を知らない人の誤解であることがお分かりいただけたでしょうか。
このヘッドホンは、音楽を楽しく聴くためのものではなく、音源の粗を正確に把握するための“堅実なツール”です。録音・編集用途では、初心者からプロまで安心して使い続けられる定番であり、まさに「DTMの相棒」と呼ぶにふさわしい存在です。
最初の一本として、もしくは「音作りや作業用の基準」としてMDR-CD900STを所有し、音楽鑑賞用とは使い分けるのがおすすめです。このヘッドホンを正しく理解し活用することで、あなたのDTMスキルは確実に向上し、より質の高い音楽制作ができるようになるでしょう。